業界トップ3ベンダーのモバイルワークスペース戦略、その一歩先へ

榎本瑞樹

榎本 瑞樹 氏
日商エレクトロニクス株式会社
エンタープライズビジネス営業本部
副本部長

2015年6月9日、Interopカンファレンスが開催されました。その中で、業界トップ3ベンダーのモバイルワークスペース戦略と題するパネルディスカッションに、シトリックス、マイクロソフト、ヴイエムウェアの3社が参加しました。日商エレクトロニクスの榎本瑞樹副本部長がモデレーターを務め、各社のモバイルワークスペースに対する取り組みや、今後の展望などが紹介されました。

モバイルワークスペースでVDIが必要とされる背景

3person

パネルディスカッションに参加する各社
(左から) 日本マイクロソフト株式会社 高添 修 氏
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 竹内 裕治 氏
ヴイエムウェア株式会社 菊本 洋司 氏

講演の冒頭で、榎本氏はIDC Japanによるクライアント仮想化市場規模と法人導入率を用いて、2019年までに国内のクライアント仮想化率は、48.1%に達するという予測を示しました。この数字を背景として、パネラーの3社に対して、モバイルワークスペースはどうあるべきかを尋ねました。

まず、ヴイエムウェア社の菊本洋司 部長は、「あらゆるデバイスで一貫性のある操作によるシングルサインオンが可能になり、すべてのWindowsリソースとオンラインリソースへ容易にアクセスできるソリューション」が必要だと説明します。

竹内裕治

竹内 裕治 氏
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
テクノロジー&ソリューション部
シニアマネージャー

続くシトリックス社の竹内裕治シニアマネージャーは、ある医師の一日の働き方を例にとって、自宅のPCや移動中のタブレットから、単一の情報にシームレスにアクセスして、診療業務を滞りなく行う様子を紹介しました。そして、その実際の仕組みを解説するために、プレゼンテーションに利用しているiPhoneを差し出し、シトリックスの各種ソリューションを組み合わせて、セキュアにクラウドにあるビジネスの共有データにアクセスする様子を実演してみせました。

「ご覧頂いているiPhoneの画面に映っているサイトは、当社のイントラネットになります。個人で所有しているiPhoneであっても、ローカルの環境とは切り離されて、暗号化された環境で接続しているので、安全に利用できるのです。技術的には、セッションごとに裏でVPNを自動的に張るので、安全性を担保した上で、モバイルで社内のイントラネットとのデータ共有が可能になります」と竹内氏は解説します。

次に、iPhoneからMacBookの画面に切り替えて、竹内氏はWindowsのデスクトップを表示します。
「これはWindows 7の仮想デスクトップです。MacBookから直接スクリーンに出しています。このように、MacBookで複数の仮想デスクトップを簡単に切り替えることができます。例えば、3Dの高精細なグラフィックアプリケーションのサンプルをご覧ください。髪の毛の細かいところが揺れ動くのがわかると思います。これは、GPUの仮想化をサーバーに仕込んで、画面転送でこちらに表示しています。ここ2年ほど、この取り組みで具体的な事例も出てきています」と竹内氏はMacBookを操作します。

竹内氏によるMacBookで複数の仮想デスクトップを簡単に切り替えるデモ

竹内氏によるMacBookで複数の仮想デスクトップを簡単に切り替えるデモ

この他に、SUSE Linuxのデスクトップで、Firefoxのブラウザが表示される仮想デスクトップもMacBookから接続して操作します。

「これは、Windowsを仮想的に用意して、画面転送する仕組みと同じで、Linuxのアプリケーションもユーザーに仮想環境として提供していくので、新しい使い方を広められると思います。もうひとつ、こちらは普通のWindows 8のデスクトップですが、これはネットワークにつながっていなくても使えるデスクトップです。ローカルのハイパーバイザーの上で動かしているバーチャルマシンです。オフラインでもネットワークの安定しない環境でも、オンラインと共通の環境を利用したいという要望に対して、提供していく計画です」と竹内氏はオフラインで使える仮想デスクトップも紹介しました。

最後に日本マイクロソフト社の高添修エバンジェリストが、自社のモバイルワークスペース関連製品について触れました。数ある関連製品の中でも、今後のワークスペースの中心となるのは、Windows 10とWindows Server 2016になると説明します。しかし、新しいOSが企業に導入されても、過去の業務システムやデータ資産との互換性を維持するために、VDI環境は重要になると補足します。

働き方を変革した先進的な事例

各社の取り組みやデモンストレーションが終わると、榎本氏は次のテーマを提示します。
それは、「モバイルワークスペースが、実際の企業や組織にどのような変革をもたらすのか」というものです。

この問いかけに対して、菊本氏は青森県立中央病院の事例を紹介します。
「青森県立中央病院では、デスクトップ仮想化とタブレット端末の組み合わせで、看護師のワークスタイルを変革し、業務の効率化と医療サービスの高度化を実現しました。このようにお客様の業務やユースケースの理解がより重要になってくると感じています。」と菊本氏は説明します。

続いて竹内氏が全日本空輸株式会社の事例を紹介します。
「全日空様では、2013年から仮想デスクトップ基盤としてCitrix XenDesktopおよびCitrix NetScalerを採用して、約3,000アカウントで仮想デスクトップ環境の運用を開始しました。現在は、本社を含めた国内およびアジア地域の10以上の事業所で仮想デスクトップを利用し、2016年までには11,000アカウントへと拡大して働き方改革を加速する計画です」と説明します。

そして日本マイクロソフトでは、自社が2010年から2012年にかけて取り組んできた実績を語ります。
「当社では、オフィス空間の改革や多様な働き方を支える制度の導入、そしてオフィスでも自宅でも外出先でも使えるコミュニケーションツールの整備によって、一人当たりの売上高を増やし、チームの協調性も向上し、退職率の低下も実現しました」と高添氏は成果を紹介します。

最後に、各社の展望とビジョンについて質問が出されると、竹内氏は同社のイメージビデオを投影しました。ビデオでは、近未来の仕事の環境がこのようになる、という実現性の高いビジョンが紹介されました。車中のモバイル端末や家庭内のデバイスを活用して、オンライン会議や遠隔診療など、さまざまなコンテンツが場所やデバイスに応じて連続的にワークスペースに飛び込んでくる様子が映し出されました。さらには、ウェアラブルデバイスと組み合わせ、ホログラムを使って建築イメージの完成形を現地で確認したり、ドローンで空撮したり、同じセッションを離れたオフィスにいるスタッフがリアルタイムで受け取って、仮想空間をフルに使いながらダイナミックな作業をこなしてゆく未来の姿が描かれました。「このような未来に向かって、わたしたちは開発を進めています」と竹内氏は話しました。

シトリックスが描く近未来の仕事環境