プロフェッショナルインタビュー:最新の仮想化動向

キャズムを超えた仮想化導入の課題と企業の進むべき道

ベンダーに中立的な仮想化技術のエキスパート集団である日本仮想化技術株式会社は、仮想化技術に関する徹底した調査から導き出されるノウハウをもとに、コンサルティング、設計、導入、運用保守にいたるトータルな支援をエンドユーザー企業に対してワンストップで展開する企業です。

今回は、仮想化技術に関する著作・講演活動を精力的にこなすだけでなく、ユーザー企業で数多くの実績を有する日本仮想化技術株式会社の代表取締役社長をつとめる宮原徹氏(以下、宮原氏)に仮想化技術やデスクトップ仮想化に関するユーザー動向の最新トレンドをお伺いしました。

 

日本仮想化技術株式会社

日本仮想化技術株式会社株式会社
代表取締役社長
宮原 徹 氏

インタビューア:現在、サーバー仮想化という観点でユーザー企業はどのような状況でしょうか?

宮原氏:

私たちは2006年から仮想化に関する調査やシステム設計、導入などを行っていますが、企業規模を問わず当たり前に導入されるようになったと言っても過言ではありません。以前は仮想化という概念は良いのだけれども、性能劣化や信頼性などを心配するお客様が多数いらっしゃいました。しかし、今ではめったに聞きません。
現場レベルで仮想化導入に関するお客様の抵抗感は皆無に等しいと言って良いでしょう。

インタビューア:当たり前になったサーバー仮想化技術ですが、最近の企業のトレンドなどをお聞かせください。

宮原氏:

大企業においては、業務システム単位などで仮想化を導入するというお客様が多かったのですが、より仮想化のメリットを追求しようという流れが出来つつあります。具体的には、全社規模のプライベートクラウドをどのような製品や技術を利用して、どのような移行プランで実施していくかということを真剣にプランニングし実行されている企業が増えています。それらは、私たちの提供しているコンサルティングサービス内での戦略立案案件が多くなってきていることからも裏付けられます。プライベートクラウド構築に関する流れが今後2,3年は続くと思っています。

インタビューア:仮想化技術の導入に関して業種や業態の特徴などはございますか?

宮原氏:

業種、業態を問わずまんべんなく導入は進んでいると思います。新しい技術は中小企業がテスト的に導入し、やや枯れた技術になってから大企業に波及していくというのが一般的なパターンだと思います。仮想化技術の特徴としてサーバー集約によるコスト削減があげられます。そのメリットを最大限享受可能な大企業から導入が進んだのは大きな特徴だと思います。その後、中小企業にも仮想化は浸透して今では仮想化は当たり前になりました。

インタビューア:仮想化技術導入の目的はコスト削減でしょうか?

宮原氏:
サーバー仮想化の技術はキャズムを超えたと言っても過言ではないと思います。しかし、それゆえにコストを意識するお客様が増えています。お客様の要望としては全体コストを2割下げたいなどという具体的な要望が非常に多くなっています。

コスト削減は、情勢から考えて当たり前ということでしょう。また、基幹システムとして仮想化が導入されてきており、今まで以上に仮想化システムはミッションクリティカルになりつつあります。導入コストを意識しすぎて、サーバー集約度を極限まで高めてピークトランザクション時のシステム停止や増え続けるデータ量にどのように対応するかなど高度な運用に関してのノウハウを求める傾向にきています。いかに安定したシステムを構築し運用コストを下げるのかということが大きな課題ではないでしょうか。

インタビューア:お客様が抱える技術的な課題はいかがですか?

宮原氏:

最近のお客様の課題はストレージ周りが多いのが特徴です。CPUやメモリなどのサーバー製品は非常に安価になりつつあります。これらを集約するのは必然的な流れですが、このサーバーからのストレージへのアクセスは以前よりも格段に増加するわけです。サーバーに比べて非常に高価な外部ストレージをいかに最適に保つかということが技術的には重要になってきています。
ユーザー企業において、データは基本的には捨てない方向になっています。それを実現するために仮想ストレージの実装だけでなく重複排除を行うバックアップ/リストア、性能に関してはSSDや分散ストレージなど数多くのことを考慮する必要がでてきているのです。それらの最適な設計方法や運用方法を求めているお客様は非常に多いです。

インタビューア:デスクトップ仮想化の導入を検討される企業も課題は同じですか?

宮原氏:

はい、技術的な課題はほぼ同じです。ビジネス面の課題も同様にコスト削減があげられます。しかし、デスクトップ仮想化の場合、単純にサーバー集約したコスト削減だけでなく、クライアントPCをサーバーで一括制御することによる目に見えづらい運用コストの削減なども存在します。これらをトータルにROIを見極めることが実は難しく、企業の方針に大きく依存する部分でもあります。

また、デスクトップ仮想化導入のビジネス課題としてコスト削減以外でも、在宅勤務やフリーアドレスに代表されるようなワークスタイルの多様化への対応、セキュリティ確保、ビジネスの継続性確保、Windows 7アップグレード、スマートホン/タブレット活用などがあげられます。

特に去年発生しました災害を機にデスクトップ仮想化を検討する企業が多くなりました。突然の災害があった場合でも、ネットワークと基幹システムが復旧できれば業務を短期間で再開できるので注目されているようです。

インタビューア:製品選定なども行っているかと思いますが、XenDesktopを動作させるサーバー仮想化ソフトは、どのような製品を推奨していますか?

宮原氏:

一概には言えませんが、お客様の環境や方針次第であると言えます。シトリックス社のICAプロトコルにより、狭帯域でも優れた操作感が味わえるXenDesktopの導入を検討するお客様はいらっしゃいます。
お客様がXenDesktopとXenServerのワンストップサポートを希望する場合にはXenServerになるでしょう。もちろんXenDesktop自体は、サーバー仮想化ソフトを選ばずに動作しますので、Windows Serverに標準で搭載されているHyper-Vを利用したい場合には、そちらを利用すれば良いと思います。また、企業がVMware ESXに慣れているのであれば、そのうえでXenDesktopを動作させれば良いと思います。XenDesktopの利点として、マルチハイパーバイザー対応があげられますが、これはエンドユーザーに選択肢を与えるという意味で非常に良いことだと思います。

インタビューア:デスクトップ仮想化導入の成功の秘訣はなんだと思いますか?

宮原氏:
誰がどのリソースをどれくらい利用するのかということを把握することが非常に重要です。つまり、デスクトップ仮想化を利用する人の状況を把握することです。たとえばデスクトップ仮想化のサーバーをデータセンターに配置し主要拠点間を100Mでつなげたり、リモート接続のADSLが1Mだったりと企業ごとにネットワークなどの制限があります。このような状況の中で最適な製品を選定する必要がありますし、そもそも不可能な場合もあるのです。これらは利用状況により判断されるべきです。

また、一気にデスクトップ仮想化の全社展開を図ろうとすると上記のような外部的な制限がありつまずくこともあります。本当にデスクトップ仮想化導入によりROIを高く見込めるところから始めることも一つの手段ではないかと思います。その後、根付いてから実際に拡張していけば良いと考えています。

インタビューア:小さく始めることも重要なのですね。

宮原氏:

ビッグバン的にWindows 7を全社的にアップグレードするためにデスクトップ仮想化を利用するお客様もいらっしゃいます。また、私たちのお客様の中には運用現場の人がリモートからシステム管理を行うためにデスクトップ仮想化を構築している場合も例として見受けられます。これは限られた数人で利用している典型だと思います。また、上司の資料閲覧やワークフローの承認用にiPadを提供するなどという使い方もあるでしょう。いずれにしても、まずは使ってみることが重要なのだと思います。

インタビューア:デスクトップ仮想化の設計で重視する部分を教えていただけますか?

宮原氏:

今までクライアントに存在していたディスクが、すべてサーバーに集約されるわけですからネットワークはもとより、ストレージの使い方というのが重要になります。たとえば、ユーザープロファイルの置き場所や個人データの許容などの設計です。また、個人ごとのアプリケーションの利用をどこまで許可するのかなどのポリシー定義も重要です。許可しない場合には、シングルマスターイメージで済むのでストレージを圧迫させずに運用も楽でしょう。許可する場合には、個別にインストールさせないでXenAppなどのアプリケーション仮想化などを考慮していく必要があります。これらをユーザーの状況を把握しながら統合的に判断し設計することが重要です。

インタビューア:最後に今後の企業が進むべき方向性に関してお聞かせください。

宮原氏:

あきらかにクラウドを利用した分散から集中への流れが主流であり、正しい方向性です。現在はプライベートクラウドなどの構築が主流でありデスクトップ仮想化も増々トレンドになるでしょう。ある意味パラダイムシフトととらえており、企業で今まで導入していた資産管理ソフトウェアやセキュリティソフトウェアなどが必要なくなるかもしれないのです。要するにソフトウェアの選定自体もクラウドにより大きく変わることになるでしょう。

また、今後はサーバー集約したものを利用する方法と外部のサービスをオンデマンドに利用していく方法のバランスが重要になってきます。つまり、ハイブリッドクラウドの世界です。これらを自社ニーズにあわせながら最適なバランスで導入していくことが、次に求められる方向性だと確信しています。

インタビューア:ありがとうございました。

宮原氏:
ありがとうございました。