東洋経済新報社主催 エグゼクティブフォーラム 「ワークスタイル変革を支えるIT基盤の構築」

DSC00644株式会社東洋経済新報社は、シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とシスコシステムズ合同会社の協賛を受けて、これからの働き方をテーマにしたエグゼクティブフォーラムを開催しました。フォーラムの冒頭には、主催者で編集局メディア編集部 東洋経済HRオンライン編集長の田宮寛之氏が登壇し、少子高齢化により労働人口の減少が予測されている日本で、どのように働く人たちの数を維持していくべきか、その解決策の一つが「ワークスタイル変革を支えるIT基盤の構築」にあると提唱しました。

基調講演「テレワークという働き方について」

フォーラムの基調講演には、厚生労働省 労働基準局労働条件政策課 調査官の古瀬陽子氏が登壇し、テレワークという働き方をテーマにした厚生労働省の取り組みについて講演しました。
DSC00656「日本の人口は、2060年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推測されています。もしも、経済成長と労働参加が適切に進まないと、2030年の就業者数は2012年と比較して821万人の減少になると予測されています。そうならないためには、女性の就業を継続するための働き方が重要であり、テレワークの効果が期待されています」と古瀬氏は説明します。
テレワークは、女性の継続的な就労を支援するだけではなく、優秀な人材の採用や流出防止にも効果があり、社員の生産性向上や意識改革、さらにはオフィスコストの削減や事業継続性の確保にも効果があると、古瀬氏は指摘します。また、労働力人口減少の緩和にもつながり、地域の活性化や雇用の創出、さらには環境負担の軽減という社会にとっての効果も期待できます。そして、就業者にとってはワークライフバランスの向上に、通勤時間の削減による時間の有効な活用や業務効率の向上などの効果が得られます。
「様々な効果の期待できるテレワークですが、我が国の現状では、制度としてテレワークを導入している企業は9.3%に留まっています。また、導入している部門は、研究・開発・設計部門が多く、経理や会計などの部門は少ない、という現状の課題があります。政府としても、こうした課題を解決していくために、平成26年6月24日の閣議決定では、経済財政運営と改革の基本方針2014や日本再興戦略の改定2014などで、テレワークの推進に取り組むと明記しています」と古瀬氏はテレワークを取り巻く行政の取り組みについて触れます。
テレワークに関する閣議決定では、この他にも「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、「2020年には、テレワーク導入企業を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上に」と記載されています。
「テレワークの導入が進まない理由として、労働時間の管理や円滑なコミュニケーションの難しさに加えて、情報セキュリティに対する不安や、現場の協力体制の構築や業務実績の評価が難しい、という課題があります。これに対して、厚生労働省だけではなく、総務省や経済産業省に国土交通省などの関係省庁が連携して、テレワークを導入する事業者に対して、情報セキュリティや労働時間管理手法などのテレワーク導入モデルを構築したり、ノウハウの助言や経費の補助などを実施するなどの支援策を推進していきます」と古瀬氏は行政の取り組みについて触れます。
平成26年度の厚生労働省におけるテレワーク普及に向けた施策では、テレワーク・セミナーを開催し、普及促進に向けた機運の醸成や、テレワーク相談センターと訪問コンサルタントによる個別企業へのきめ細かな支援、さらに助成金の支給にテレワークモデル実証事業などを推進してきました。
「平成27年度には、表彰制度の検討や業界団体と連携した支援策の検討に、国土交通省と連携したサテライトオフィスの整備など、テレワークの普及に向けた施策を計画しています」と古瀬氏は来年度に向けた計画に触れ「働く人々にさまざまなプラスの効果をもたらすテレワークの環境整備に、政府全体で取り組んでいきます」と締めくくりました。

事例講演I 泣ける!広島県の新たなワークスタイルへ向けた挑戦

DSC00707事例講演では、広島県の情報化統括責任者の桑原義幸氏が登壇し、広島県におけるワークスタイル変革への取り組みについて講演しました。桑原氏は、大手ITベンダーでシステム開発やプロジエクト管理業務に従事した後、コンサルタントとして活躍し、2003年から金融庁CIO補佐官を努め、IT戦略や政策立案に尽力し、2011年4月から広島県のCIOとして県職員のワークスタイル変革に取り組んできました。
「広島県では、ITを駆使してクールでスマートな電子行政の実現をビジョンに掲げて、ワークスタイル変革を推進してきました。具体的には、Web会議システムやリモートアクセスの導入に、スレートデバイスによるペーパーレスの実現、そしてシンクライアントシステムを導入してきました。
「取り組みの基本的な考え方は、オフィス中心の働き方から、人中心の働き方への転換です。いつでも、どこでも同じ生産性で業務を遂行できる環境があれば、オフィスにいなくても仕事ができるようになります。民間の企業では、普通で当たり前のことですが、官公庁では考え方そのものがハードルの高い挑戦でした」と桑原氏は説明します。
広島県では、個々の職員へのデクストップPC設置を廃止し、ノート型シンクライアント端末の導入を推進しました。県の職員が目指したワークスタイルは、いつでもどこでも同じ環境で仕事ができるモバイル環境の実現と、フリーアドレスの導入によるコミュニケーションの活性化、そして複数デバイスを利用した人中心の組織運営でした。
「調達したシンクライアントシステムは、仮想デスクトップ方式にCitrix XenDesktopによるVDIを採用し、250台のノート型シンクライアント端末に、システム開発や庁内用の無線アクセスポイントの追加などでした。導入した部門は、最も導入効果が高いと考えられる本庁の商工労働局でした。導入後に同局の職員からは、わざわざ資料を持って移動しなくてよくなり、その場でパソコン業務ができるので業務効率が上がった、などの評価を得られています」と桑原氏はシステムの概要と成果について触れます。
そして「これからも、どんどん役所の文化、習慣を変えていきます」と今後に向けた、さなるワークスタイル変革への意欲を語りました。

事例講演 II 丸紅におけるセキュアなリモート業務環境の構築

2つ目の事例講演では、丸紅株式会社の情報企画部 部長付 木村直喜氏が登壇し、丸紅におけるセキュアなリモート業務環境について紹介しました。
DSC00824「総合商社の丸紅は、業種が多岐に渡り、営業部門で11部門、コーポレートスタッフ部門は15部門に及びます。国内外に多数の事業所や現地法人を構え、グループ全体で453社、39,126名の従業員数になります。この丸紅グループに対して、全社と部門、本社と事業会社、国内と海外といった観点で、最適な業務システムやサービスを「IT戦略ロードマップ」として提示し展開する役割を情報企画部では担っています」と木村氏は、自社の特長と自部門の役割について説明します。
情報企画部では、以前から業務データの情報漏えいリスクについて検討し、電子データのセキュリティ強化に取り組んできました。
「セキュリティ対策のみを強化してしまうと、各自が勝手に個人メールを転送してしまったり、クラウド型オンラインストレージに会社のファイルをアップロードしてしまうなど、シャドーITが台頭する危険性もありました。そこで、リモート業務環境の必要性が高まったことから、セキュアOWA導入プロジェクトとして、従来のメール機能だけではなく、ファイルサーバやイントラネットに業務系システムも同一環境で提供できるようにするために、Citrix XenAppを採用しました」と木村氏はセキュリティと利便性を両立するために、仮想デスクトップを選択した理由を解説します。
Citrix XenAppを使うようになってから、社外から活用できるデータが増えて、業務効率がアップし、外出の多い営業社員はオフィスに戻る必要がなくなり、ワークスタイル変革につながったと評価されています。
「2014年2月からは、Citrix XenMobileを採用し、個人や会社が所有するモバイルデバイスから、アプリを介して安全に業務を遂行できるセキュアモバイル導入プロジェクトが始動しました。将来的には、メール機能だけではなく、ファイルサーバやイントラネットに業務系システムもモバイル端末から同一環境で利用できるようにする計画です」と木村氏は今後に向けた取り組みを語りました。

ITによるワークスタイル変革で実現する組織力の強化

講演の最後には、シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社のチャネル アンド マーケティング本部の鈴木和典本部長が登壇しました。
DSC00867「ワークスタイル変革を実現するためには、制度や風土とITソリューションの両方がかみ合わなければなりません。世の中には様々なITソリューションが存在しますが、変化や応用を求められる時代では、いかに応用が効いて長持ちするIT環境を構築できるかが、非常に重要です。その意味では、シンプルで柔軟な環境を作るシステム基盤の役割が大きくなります。これからのIT環境は、社内か社外かという対立ではなく、データセンターと利用環境という、応用の広い根本的な対応が求められています」と鈴木氏はワークスタイル変革に求められるITソリューションのポイントを指摘します。
「ワークスタイル変革は、働く場所からの開放であり、仕事の環境を『仮想化』することを意味しています。それは、単なる端末やアプリの話ではなく、ITを支える基盤改革こそが本命なのです」と提唱し今回のエグゼクティブフォーラムを締めくくりました。