DaaSビジネス最前線

DaaS登場の背景

1990年台から急速に発展を遂げたインターネットを利用した企業システムは、クライアントサーバー型のシステムの欠点を補うものとして発展してきました。インターネットコンピューティングのアーキテクチャーは、アプリケーションロジックとプレゼンテーションロジックをサーバー側に配置することによる運用管理性の向上が大きな利点としてあげられます。インストールも更新もサーバー1か所への設定だけで、クライアントはブラウザさえあれば、いつでもどこでもアプリケーションを利用可能な利点は多くの企業で認められました。

このインターネットコンピューティングの延長戦上に発展してきたIT要素技術が、サーバー利用の効率性を追求するサーバー仮想化やデスクトップ環境を効率的に配信するデスクトップ仮想化という技術でした。これらの技術を利用することによりサーバー集約率の向上やデスクトップ管理が簡素化されることで、コスト削減やセキュリティの向上などさまざまなメリットを企業は享受できるのです。

その一方で、これらの発展とともに企業は今まで独自に所有していたIT資産を事業者から安価に利用する時代へと変わりつつあります。

その事業者が提供するサービスは、さまざまな形で提供されています。そのサービスの構成要素ごとにSaaSやPaaS、IaaS、DaaSという呼称があるのです。

提供される構成要素ごとに変わる名称(SaaS、PaaS、IaaS)

皆様は、SaaSやPaaS、IaaSなどをご存知でしょうか?
DaaSを理解する前に、まずはそれらをおさらいすることにしましょう。

以下は、総務省 スマートクラウド研究会でのそれぞれの定義です。

SaaS
(Software as a Service)
アプリケーション(ソフトウェア)をサービスとして提供する
PaaS
(Platform as a Service)
アプリケーションを稼働させるための基盤(プラットフォーム)をサービスとして提供する
IaaS
(Infrastructure as a Service)
サーバー、CPU、ストレージなどのインフラをサービスとして提供する

出典:総務省 スマートクラウド研究会報告書

つまり、システムはハードウェア、プラットフォーム、アプリケーションから成り立ちますが、それ毎にサービスとして提供されるわけです。それぞれの詳細をご紹介します。

  • IaaS
    IaaSは、ネットワーク/ハードウェア(CPU、メモリー、ハードディスク)を提供するサービスの総称です。企業は何もインストールされていないサーバー環境を提供され、その上にユーザーが必要とするミドルウェアや、アプリケーションをインストールすることになります。IaaSは、WindowsなどのOSを含む場合、含まない場合の双方で語られることもありますが、OSを含まない場合には明示的にHaaS(Hardware as a Service)と呼ぶ場合もあります。代表例) Amazon EC2、Rackspace、Nifty Cloud など
  • PaaS
    PaaSは、IaaSの構成要素に「ミドルウェア」を加えた総称です。データベースやWebサーバーといったアプリケーションを稼働させるためのソフトウェアが提供されるのが一般的です。ユーザーは、必要なアプリケーションのソースコードをPaaS環境にアップロードすることによりアプリケーションを動作させることが可能になります。提供する事業者によって利用可能なデータベースやアプリケーション開発言語が限定される特徴があります。代表例) Windows Azure、FORCE.com、Google App Engineなど
  • SaaS
    SaaSは、ユーザーはネットワーク、ハードウェア、OS、ミドルウェアのすべての要素について、自身で準備をする必要がありません。ユーザーはブラウザを利用して、SaaS提供事業者のWebアプリケーションにアクセスし、サービスを利用することになります。代表例) Office 365、Salesforce、Google Apps、NetSuiteなどDaaSとはそれではDaaSとは何なのでしょうか?DaaSとは、Desktop as a Serviceの略です。読んで字のごとくデスクトップ環境を提供するサービス形態です。SaaSがアプリケーションとプレゼンテーションを配信するのに対して、サーバー側に設定されたデスクトップOSを含めて配信してしまうという提供形態になります。つまり、サーバー側で動いているWindowsを、クライアント端末から利用することが可能なサービスと言えるでしょう。クライアント端末には、画面表示や操作・入力が行えるだけのハードウェアがあればよく、OSやアプリケーションソフトなどはすべてサーバー上で動作します。DaaS

    DaaSの位置づけ
     

    それらを実現するための技術が、デスクトップ仮想化や仮想デスクトップなどと呼ばれます。企業は、シトリックス社が提供するXenDesktopなどで構成されたDaaSを利用することにより、サーバー側に設置されたWindows 7環境をWindows XPやiPad、Macの環境から利用するなどが可能となります。

    DaaS環境では、インターネット回線を利用しOS自体を配信するので、単純なWebアプリケーションで必要なネットワーク転送量とは比較にならないほどのネットワーク帯域を利用することが容易に想像できるでしょう。DaaSを提供することは、今までのIaaSやSaaS、PaaSに比べて格段に技術的ハードルが高いと言われていたのです。しかし、シトリックス社のHDXなど配信技術の進化により、OSだけでなくOS上で動く3D CADなどの高度なアプリケーションさえも、まるで手元の強力なデスクトップ環境で動作しているかのような高パフォーマンスが実現可能となっているのです。

    そのような技術的進展と社会的な背景があり、国内でも利用可能なDaaSが続々と登場し採用がされているのが現状なのです。

    DaaS

    DaaSイメージ
    DaaS提供会社にみるトレンド

    今回、シトリックス社が主催したイベントであるCitrix iForum 2011 Japanのイベントにて合計8社のDaaSを詳細に伺ってきました。
    非常に印象的だったのが、どの企業も問い合わせが増加しているだけでなく、DaaS導入が加速しているとのことでした。
    特にDaaS契約者の多くは、契約の理由として、災害対策用途や情報漏洩などのセキュリティ対策、在宅勤務や個人端末からのテレワーク用途、オフショア開発や派遣社員向けなど多岐に渡るということでした。

    また、気になる価格に関してですが、例えば株式会社インターネットイニシアティブの提供するXenDesktopを利用したIIJ GIO仮想デスクトップサービスでは、500ユーザー利用で運用も含めて1ユーザーあたり初期費用9,200円、月額費用6,000円と昔に比べて非常に安価なのが特徴的でした。また、NTTドコモでは完全にパッケージ化されたモバイルセキュアデスクトップというサービスが提供されており、OS、ブラウザ、Microsoft Officeなどのプリインストールモデルが提供されていました。このサービスには、1ユーザーあたり4GBのストレージ環境を標準で利用可能で初期にかかる事務手数料6,000円、月額利用料金が7,500円(1年利用する場合)という低価格で提供されていました。4GB以上必要な場合には追加1GBごとに100円 (月額)という価格設定であったのも印象的でした。このようにデスクトップ環境も電気、ガス、水道や携帯電話などの契約と同様にユーティリティ化されてくるのだと強い印象をうけました。

    その他にも株式会社NTTデータや新日鉄ソリューションズ、日本アイ・ビー・エム、日立製作所/日立システムズ、富士通などが信頼性や高パフォーマンス、運用管理性、拡張性などを武器に豊富かつ柔軟なDaaSを提供していました。それらは自社専用のプライベートなDaaSの構築支援サービスなども含まれており強固なデータセンターで利用可能です。

    今回、各社からのお話を聞き1点注意が必要だと思ったのはWindowsのライセンスです。
    ほとんどのDaaSにはOSライセンスは含まれていないのです。企業側で月額利用1ユーザーあたり1,200円(参考価格)のWindows Virtual Desktop Access(VDA)ライセンスをマイクロソフト社から事前に購入する必要があるのです。少しばかり面倒だとお思いかもしれませんが、通常のWindowsの保守サポート契約である「Software Assurance(SA)」や、企業向けの包括契約である「Enterprise Agreement(EA)」を契約している場合は、VDAのライセンス料金が含まれるためであるとしています。このような契約を締結している企業にとってはWindows環境を利用したDaaSは、安価に実現可能な点を特徴ではないでしょうか。

    DaaS
    Citrix iForum 2011 Japan DaaS展示コーナー

    今回、お話をお伺いしたDaaS提供会社とそのサービス名は以下になります。

    DaaS提供会社 DaaSサービス名
    株式会社日立製作所/株式会社日立システムズ Harmonious Cloudクライアントサービス
    日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM Smart Business デスクトップ・クラウド・サービス
    株式会社インターネットイニシアティブ IIJ GIO仮想デスクトップサービス
    株式会社NTTデータ BizXaaS Officeデスクトップサービス
    新日鉄ソリューションズ株式会社 クラウド型デスクトップ仮想化サービスDaaS@absonne
    富士通株式会社 ワークプレイス-LCMサービスの1つである「仮想デスクトップサービス」
    株式会社NTTドコモ モバイルセキュアデスクトップ

    まとめ

    SaaSが進化し、もはやデスクトップOSまでもサービスとして利用可能な世界が現実のものとなっています。セキュリティを気にせずにお気に入りの端末から、いつでも、どこでも使い慣れた仕事環境を利用できれば、生活環境の充実が図れるのは言うまでもありません。さらに、企業にとっても社員の生産性向上、コスト削減、事業継続といった恩恵をDaaSにより享受できるようになるのです。そして、シトリックスのデスクトップ仮想化技術とDaaS提供事業者の活躍が、私たちの生活をより良いものにしてくれているのです。

    ※各社が提供しているサービスや価格に関しては、10月4日時点でのカタログをもとに記述しています。詳細に関しては各サービス提供企業にお伺いください。