クラウド化で実現するIT基盤統合

オープンクラウドによるROI創出

第1章 クラウドによるIT基盤構築

「IT基盤の統合・再構築」がここ数年の企業ITの重要テーマとなっている。クラウド化によるIT基盤の見直しにあたっては、クラウド技術/サービスの特性を見据えて、インフラ要件とシステム配置に関わる自社方針を確立することが求められる。

進むIT基盤の統合・再構築

現在、国内企業で最も重視されているITテーマは、「IT基盤の統合・再構築」である。ITRが実施する『IT投資動向調査』では、これが過去3年にわたり最重要テーマとなり、これに関連する「仮想化技術の導入」「スマートデバイスの業務への活用」「データセンターの移転統合」「ビジネス系システムのクラウドへの移行」も比較的重要度の高いテーマにあがっている。2012年の調査時点では、「IT基盤の統合・再構築」の実施率は34.7%にとどまるが、2015年には82.7%に急拡大すると予想される(図1)。

図1 主要なIT動向の重要度と実施率

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ITRに寄せられるさまざまな企業からの意見を集約すると、IT基盤を見直す契機になっている最大の要因は、年々増加する定常費用の節減にある。これまでも企業は、プロジェクトや機器・ソフトの調達といった案件単位でのコスト節減を、競争入札や見積り交渉によって行ってきた。しかし、ITインフラ・アーキテクチャを見直して、システム稼働環境を集約・統合したり、コスト競争力のあるクラウドサービスを利用したりすれば、より合理的に大規模のコスト抑制が期待できる。また、グループ共通のIT基盤を構築すれば、規模の経済性が高まることでますますその効果は確実となろう。こうした背景から、IT基盤の統合・再構築は多くの企業で重点課題となっている。

システム配置方針

IT基盤(本稿ではシステム稼働環境の意)を再設計するには、いかなる仕様にするか、どのような技術やプラットフォームを使うか、さらには所有型にするか利用型にするかといった各種の方針化が必要となる。昨今では、ソリューションが多様化しており、インフラ要求に応じて個々のシステムを適材適所に配置することは現実的な選択となっている。自社にとって利用機会の多い基盤方式が明確になれば、そこを軸に統合・集約を進めればよい。それにはまず、基盤構築の方式としてどのような選択肢があるかを知っておきたい。

基盤方式は、大きく物理環境、仮想環境、クラウド環境の3つに分類され、いずれも所有型(オンプレミス)と利用型(外部利用)の選択ができる。クラウド環境には、プライベートクラウドとパブリッククラウドがあり、この中間にVPC(仮想プライベートクラウド)の選択肢がある。VPCは、性質上プライベートクラウドだが、プロバイダーの資源を用いるため利用型に位置付けられる。

それでは、どのような要求の場合にどの基盤方式が適当となるかを考えてみたい。インフラ要求に応じたシステム配置方針の考え方を以下に示す(図2)。各システムの要求事項をここでは6項目に整理している。要求①、②、③については連続して評価できるが、④、⑤、⑥は独立した項目であり、個別の評価を優先すべきである。例えば、オンラインショッピングのシステムで爆発的なアクセス増加に耐えるインフラ要求があれば、オートスケール機能を持つパブリッククラウド(IaaS/VPC)が唯一の選択肢となろう。なお、各々の要求項目のなかにも複数の評価要素がある。実際のシステム仕分けにあたっては、自社環境をふまえた独自の基準を策定することが推奨される。

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「仮想統合」vs「クラウド化」(PDFダウンロード)

図2 インフラ要求とシステム配置方針

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