Interop Tokyo講演レポート ~Apache CloudStackの現状と未来~

Apache CloudStack: Present and Future

KA-11_cloudstackInterop Tokyo 2014の基調講演に、Citrix社の Cloud Platforms Group CTOのSheng Liang氏が登壇し、Apache CloudStackの現状と未来について講演しました。Sheng Liang氏は、Cloud.com(Citrix Systems, Inc.により買収)の創立者 兼 CEO として、同社のビジョンと方向性を推進する役割を担い、企業による自社のクラウドの活用方法に変革を推進してきました。そして、2011年7月からは、シトリックスのクラウド プラットフォーム グループを担当するCTOに就任しています。

CloudStackの歴史と最新動向

登壇したSheng Liang氏は、CloudStackの歴史について、次のように振り返ります。

  • 2008年9月 開発開始
  • 2010年5月 GPLから v3リリース
  • 2011年7月 シトリックス社により買収
  • 2012年4月 Apache Software Foundationに寄与
  • 2012年12月 ASFから ファーストリリース(4.0.0-incubating)
  • 2013年3月 Apache CloudStackがトップレベルのプロジェクトになる
  • 2014年1月 4.2.1をリリース
  • 2014年5月 4.3をリリース

「Apache CloudStackは、現在アメリカやアジアで人気があり、世界108カ国で使われています。その中でも、トップ10に入る国は、米国、オランダ、英国、日本、中国、台湾、インド、カナダ、ブラジル、フランスとなっています。これまでの歴史を振り返ると、2009年から2011年までのCloudStackは、クラウドを構築するためのオープンソースでした。そして2012年から2013年にかけては、クラウドを運用するための存在となってきました。さらに2014年から2015年にかけては、クラウドから収益を得られるものへと発展していきます」とSheng Liang氏は経緯と最新の動向について説明します。

Apache CloudStackが、これまでの導入や運用だけではなく、収益に貢献する存在となる理由について、新たにリリースされた4.3の機能の中から、コストと運用性やアップグレードの伸縮性(Resiliency)をSheng Liang氏は指摘します。まずコストと運用管理に関する新機能では、複数のVMシステムをモニタリングできるようになりました。また、MySQLのDBをActive-Active/Active-Standbyで運用できるようになりデータベースの高可用性も実現しています。そしてRolling Upgradeによって、CloudPlatformをアップグレードする際に、極力サービスに影響を与えない伸縮性(Resiliency)を提供しています。

IaaS仮想化ネットワークに求められるソリューション

CloudStackは、図(図1)のように物理サーバーと仮想マシンを制御して、開発者からは同様のリソースとして利用できます。

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図1 物理サーバーと仮想マシンの制御図

また、IPMIとPXEブートをサポートするすべてのサーバーを管理できます。そして、DHCP/PXEサーバーの提供や既存のHCP/PXEサーバーを利用できます。さらに、個々のサーバーに対して、最適なVLANを公開するためのTORスイッチをプログラムします。
「CloudStackにより、クラウドの運用はより簡単になります。多くの開発者が、セットアップに時間を割く必要はなくなるでしょう。ところで、今回はInteropの基調講演ですので、クラウドのネットワーキングについて考えていきましょう。CloudStackによるIaaSの仮想化ネットワークには、多くのソリューションが求められています」とSheng Liang氏は、いくつかの課題を提唱します。

Support multi-tenancy with isolation
アイソレーションによるマルチテナントのサポート

Unrestricted VM placement in data center
データセンターにおける無制限のVM稼動

Quick on-demand provisioning of networks
オンデマンドによる迅速なネットワークのプロビジョニング

Scalable: does not restrict number of tenants
テナントの数を制限しないスケーラビリティ

Automated solution without manual provisioning
手作業でのプロビジョニングを必要としない自動化ソリューション

「この図(図2)は、VLANによる仮想化ネットワークの例です。このような例では、いくつかの解決しなければならない問題があります。

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図2 VLANによる仮想化ネットワークの例

例えば、4096という最大VLAN数により、スケーラビリティには制限があります。また、手作業でのプロビジョニングが必要になります。そして、運用環境のスイッチの再構成には煩雑な作業が伴うため、不注意によって機能を停止させてしまうリスクもあります。こうした課題を解決する方法として、SDNが注目されています」とSheng Liang氏は説明します。
SDNは、Hypervisorのような機能をネットワーク向けに提供するコントローラーになります。CloudStackとの関係は、以下の図(図3)のようになります。

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図3 CloudStackとの関係図

CloudStack SDN controller intgrationには、海外をはじめ日本のメーカーも参加しています。

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図4 CloudStack SDN controller intgration 参加メーカー

「CloudStack SDNを利用したOverlay networkingの仕組みは、この図(図5)のようになります。

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図5 CloudStack SDNを利用したOverlay networkingの仕組み

Overlay networkingによって、物理ネットワークから仮想ネットワークを切り離します。そして、ネットワークはIPトランスポートだけをサポートします」とSheng Liang氏はOverlay networkingの特長に触れます。
先のVLANsによる仮想化ネットワークの例に対して、Overlaysによるネットワーク仮想化を構成した例が、こちらの図(図6)になります。SDNは、図のように構成された仮想スイッチ間の調整を行います。

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図6 Overlaysによるネットワーク仮想化を構成した例

L4からL7のレイヤーで高性能な仮想プラットフォームを構築するNetScaler SDX

「CloudStackでオーケストレーションするレイヤーには、SDNがサポートするL1からL3のほかに、IPS/IDSやFirewallにADCなどのアプリケーションコントローラーが稼動するL4からL7のレイヤーにおいても、パフォーマンスの向上や負荷分散などのソリューションが求められています。このレイヤーにおいては、CitrixのNetScaler SDXというアプリケーションコントローラーがあります」とSheng Liang氏は、NetScaler SDXを紹介します。

NetScaler SDXは、SDNに対応し仮想アプライアンスを実行するために最適化されたプラットフォーム製品です。NetScaler SDXは、ADCやWAN Optをはじめ、Cloud BridgingやDataにFirewallなどを搭載し、L4からL7レイヤーの仮想プラットフォームに対応しています。また、オープンプラットフォームなのでサードパーティー製のアプリケーションもプラグインできます。(図7)

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図7 サードパーティ製アプリケーションにも対応するNetScaler

「NetScalerという製品を多くの人は、ロードバランサーだと思っているかもしれません。しかし、NetScaler SDXはアプリケーションコントローラーとして、CloudStackと組み合わせることで、L4からL7の仮想プラットフォームとして高い性能を発揮します」とSheng Liang氏は話します。

CloudStackの今後の展望

「大手のデータセンターや大企業では、SDNの採用が進んでいますが、まだ中堅や小規模な事業者では、SDNの導入は促進されていません。CloudStackのユーザーは世界中にいますが、まだSDNも含めてオペレーションが容易であるとは言えません。こうした課題を解決していくために、次のリリース4.4では、CloudStackが仮想ルーターをサポートするなど、ネットワークコントロール機能を搭載していく計画です。また、ネットワーク基盤に問題が発生したときでも、CloudStackとSDNコントローラーが、常に操作できる必要があります。そのために、オペレーションのさらなる改善が必要です」とSheng Liang氏は、今後に向けたCloudStackの取り組みについて触れます。

オペレーションの改善においては、クラッシュを予防する仕組みや、障害に強いデザインにより回復力を高めると共に、復旧時に管理者に制御を与えたり、統合監視や長期にわたる運用の可視化によって、障害時に管理者が介在できるようなアラートやオペレーションのサポートも検討しています。

「5年前にCloudStackが登場する以前は、大規模クラウドサービスを構築するノウハウを蓄積しているのは、アマゾンとグーグルだけでした。しかし現在は、世界108カ国で多くの人たちが、CloudStackを利用して簡単にクラウドを構築し運用できるようになりました。そしてこれからは、より多くの人たちが、まるでサイトを運用するような容易さで、簡単にクラウドとSDNを運用できるようになっていくと思います」とSheng Liang氏は、CloudStackとSDNの展望を語りました。