基礎から理解するシンクライアント3つのポイント

近年、再注目されている「シンクライアント」ですが、実はその歴史は古く汎用機時代のダム端末まで遡ることは周知の事実でしょう。

それがなぜ今になって注目されているのか?そもそもシンクライアントとは何なのか?本記事では3つのポイントでシンクライアントの基礎を解説いたします。

シンクライアントとは

現在のネットワーク環境というのは、ほとんどの企業はファットクライアントで構成されています。

ファットクライアントとは、言わば皆さんが自席で利用するPCのことであり、一般的にはWindows OSが動作しそのOS上にアプリケーションをインストールします。

その一方でシンクライアントの「シン(Thin)」とは「薄い、厚みのない」といった意味があり、言い換えるならば“必要最低限の機能を備えた”PCということになります。

つまり、シンクライアントとは通常クライアント側にあるOSやアプリケーションもすべてサーバー側で管理し、PCとデスクトップを切り離して運用しているというシステム環境のことです。ここではデバイス自体をシンクライアント端末、シンクライアント環境をシンクライアントとしてご紹介します。

デスクトップ仮想化とシンクライアントの違いは

よく同一されているシンクライアントとデスクトップ仮想化(VDI)ですが、これは半分正解半分不正解といったところです。デスクトップ仮想化とはシンクライアントの実装方式の一つで、シンクライアントそのものではありません。

詳細な実装方式については後述します。

シンクライアント構成する4つの実装方式

シンクライアントの実装方式は大別すると「ネットブート型」と「画面転送型」の2つ。後者はさらに3つの実装方式に分類されるので合計で4つの実装方式を持っています。

ネットブート型

ネットブート方式

ネットブート方式というのはディスクレスPCを使用して、サーバー上に保管されてOSのイメージファイルを読みとることで利用できます。つまり、画面を転送しているのではなくサーバー側でクライアント端末を制御しているというものです。

この方式ではユーザーがそれぞれリソースを占有できるので、通常のPCに近いパフォーマンスで利用することができます。しかし、使用アプリケーションがユーザーごとに違うとその分イメージファイルを用意しなければなりませんので、管理運用は煩雑化してしまいます。

画面転送型

SBC(サーバーベースコンピューター)方式

ネットブレード方式ではあくまでクライアント端末がアプリケーションを実行しているのに対し、SBC方式ではサーバーOS上でアプリケーションを稼働させクライアント端末に画面を転送することで利用可能にします。

従ってクライアント端末に必要なものはキーボード・マウス・画面表示のみと、全体的なコストパフォーマンスは最も優れていると言えます。

ただしサーバーOS上でクライアントアプリケーションを仮想させなければならないため、アプリケーションの動作確認などが必須です。

ブレードPC方式

ブレードPCと呼ばれるブレードサーバー※1をサーバールーム(あるいはデータセンター)に設置してブレードPCごとにクライアントOSを稼働。クライアントPCはRDP(Remote Desktop Protocol)※2により紐付けられたブレードPCで稼働しているデスクトップ環境を利用できるようになります。

クライアントPCごとに一つのブレードPCが割り当てられるのでパフォーマンスは高く、CADといった3Dデータなども処理することが可能です。

ただしユーザーごとにブレードPCを増やす必要があり、通常のクライアントPCよりも高価なことからコストが肥大化することも少なくありません。

※1:「ブレード」と呼ばれる抜き差し可能なサーバーを複数搭載可能なケースに搭載したサーバー。
※2:サーバーの画面を、ネットワークを通じクライアントPCに転送するためのプロトコル。

仮想デスクトップ方式

仮想化ソフトを用い、1台のサーバー上に複数ユーザのPC環境を構築する方式です。物理的には1台のサーバーの共有ですが、論理的には1人1台の仮想PCを利用することが可能です。4つのシンクライアント実装方式の中では最もバランスの取れた方式であり、多くの企業が導入している方式でもあります。

独立性が保たれているためユーザーはシンクライアント環境を意識する必要がなく、かつ管理性にも優れているのがポイントです。

ゼロクライアント

ゼロクライアント(Zero Client)とはシンクライアント端末の一つの形態です。一般的にシンクライアント端末は、汎用的なオペレーティングシステムを搭載しています。

それに対してゼロクライアント端末は、WindowsやLinuxなどのオペレーティングシステムやHDDを搭載せずネットワーク接続とディスプレイ出力、キーボード、マウス入力のみを備えた端末を言います。データセンター上の仮想デスクトップ環境に接続するためだけのデバイスということです。

そのため導入や運用コストの低減につながるだけでなく、セキュリティにも優れています。代表的なゼロクライアント製品としてWyseやNcomputingなどがあります。

シンクライアントで解決できる主な課題

シンクライアントでどのような企業課題を解決できるのでしょうか。ここでは主に仮想デスクトップ方式を採用した場合における「ハードウェア」「管理者」「セキュリティ」「ユーザー」といった4つの観点からそれぞれ解決できる課題を見ていきましょう。

ハードウェア

  • リソースを分割して利用できるため、使いきれていなかった分を効率的に使用することができる
  • サーバーを増設するだけでアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができる
  • サーバー冗長化で対象性を向上でき、かつバックアップが用意になる

管理者

  • サーバーによる一括管理ができるため拠点ごとの管理が必要なくなる
  • システムアップデートやパッチ漏れによる無駄な作業が発生しない
  • サーバー側でユーザーの追加・削除が可能でアカウント管理が楽になる
  • 一定期に必要なPCのリプレース作業が楽になる

セキュリティ

  • データはクライアントPCではなくサーバーに保管されるため必然的にデータ持ち出し規制をかけることができる
  • ノートPCなどモバイルデバイスがあれば外出先からでもデスクトップへアクセス可能になり、モビリティが向上する
  • 管理者が一括してソフトウェアを最新の状態に保つため安全な環境を構築できる

ユーザー

  • ネットワーク整備によりどこからでも同じデスクトップ環境を利用できるので、リモートワークを実現できるデータがクライアントPCに保管されないため安心して持ち出せる
  • サーバー側でデスクトップ環境を集約管理してくれるおかげでユーザーとして個別に対応する必要がない

まとめ

このようなメリットがあるためシンクライアントは多くの企業のIT課題を解決するための有効的手段であることは間違いありません。2019年までにはシンクライアント導入企業が47.9%と約半数にのぼると予測されているので、今後さらに注目度が高まるのは間違いないでしょう。

皆さんも現状課題を解決し、次世代のIT社会を生き抜くためにシンクライアント環境を検討してみてはいかがでしょうか?