デスクトップを持ちだそう:これからのデスクトップは震災リスクも軽減する

デスクトップの現状

一般的にパソコンのデスクトップ上には生産性を向上させるために、様々なアプリケーションやファイル、ショートカットなどが自分用にカスタマイズされているが、起動に時間がかかるうえに、クライアントのリソースも多くを必要とする。起動に数秒という軽量なパソコンや、瞬時に起動する(つねに起動状態に近い)スマートデバイスであったとしても、クライアント、つまり手元に自分専用にカスタマイズされた情報が存在するのである。

例えば、インストールされているアプリケーション。いかにクラウドやWebアプリケーション、Webサービスが進化し、拡充し、身の回りにあふれるようになったとしても、それらのサービスにアクセスするためには、クライアント側の情報が必要なのである。一般的なビジネスシーンを考えると、Outlookなどのメールクライアント、Internet ExplorerなどのWebブラウザ、さらにはそのWebブラウザにインストールされているプラグインが存在する。
それだけではない、Webブラウザには自分がよく使うサービスにアクセスするためのブックマークが存在している。そして、それらのサービスにアクセスするためのユーザ名やパスワードを含むアカウント情報までもがWebブラウザには自分専用として入っているのである。まだ、メールクライアントとWebブラウザに関してしか触れていないが、いくらWebブラウザだけで業務ができる企業ITであったとしてもクライアント側にはこれだけの個人のカスタマイズされた情報が必要なのである。

さらに、ほとんどのパソコンにインストールされているといっても過言ではないPowerPointやExcelを代表とするOffice。そして、時には画像編集ソフトや、テキストエディタ、開発者であれば、開発ツールやその開発中のソースプログラムまでもがクライアントパソコンには入っているのである。これに加え、従来までのビジネスアプリケーションとしてクライアント/サーバー形式で提供されるものが含まれ、そして個人のデータやファイルが詰まっているのである。これがクライアントPCの現状なのである。

情報システム部門のリスク対応

さて、企業においてはリスクがつきものである、「つきもの」と言うよりはそのリスクを認識し、そのリスクへの対策を講じておく必要が企業情報システムにはある。大きなリスクとして認識されているのは、ハードウェア障害やソフトウェアのミスなどによるシステム障害が発生しないようにするための可用性確保や、情報漏洩が起きないためのセキュリティ確保などがあげられる。そして、2011年3月11日にさらに甚大なリスクを目の当たりにしたことになる。

それは地震や津波と呼ばれる自然災害によってもたらされる震災に対するリスクである。
2011年3月11日に発生した震災は企業情報システムにも大きなインパクトを残した。東北地域の沿岸部ではサーバーはもちろん、クライアントPC、そしてアプリケーションからデータまですべてが大規模な津波によってのまれたのである。企業が持っているノートパソコンもデスクトップパソコンもしかりである。つまり情報システム全体をなくしてしまった企業もある。

この後、企業情報システムは自社にサーバーやデータを配置するリスクを再認識し、より安全なデータセンターやクラウド上にビジネスアプリケーションやデータを配置することなどの対策が、震災に対するリスク対応として選ばれるケースが増えてきている。この対応によって、サーバーを構成していた高性能なサーバーハードウェア、ディスク装置、ネットワーク機器などに対する震災時の障害リスクは軽減され、かつコスト削減という効果も得られることになる。
この対策はサーバーシステムを多く所有する企業においてはメリットが大きい、しかし、中小企業や零細企業、あるいは教育機関などではサーバーの数よりもむしろクライアントの数のほうが多い、いや、クライアントの数に加えて、クライアント上に含まれる前述のアプリケーションや設定、ファイルなどのデータが圧倒的に多いのではないだろうか。従業員100人の企業でもパソコンが1台や10台ということはないだろう。でも、サーバーはおそらく10台以下ではないだろうか。つまり震災時の障害に対するリスクはサーバーだけではなく、クライアント、つまりは個々の従業員が所有するデスクトップにもあり、それらの数のほうが多いのである。

仮に、それらのデスクトップ、つまりクライアントPCがすべて震災で無くなってしまった場合、所有していた数のクライアントPCを購入し、すべてソフトウェアや設定などを行い、従業員に配布をしなければ業務継続は不可能だ。これは情報システム部門がサーバーシステムを復旧させるよりも手間と時間を必要とするかもしれない。そこで、デスクトップの仮想化が必要なのである。
デスクトップこそがサーバー側で集中して管理されることが震災対応としては望ましいのである。従業員の手元のデバイスは問わない、通常時であろうが、震災時の避難時、あるいは在宅勤務時であろうが、自分のデスクトップが安全に保持されていることのメリットは大きい。一般的に考えられているサーバーシステムだけの震災対策だけではなく、こういったデスクトップの対策が素早く講じられていると、情報システムとその情報システムを活用するエンドユーザーの両方が受けるダメージが少なく、かつ通常業務に素早く戻ることができるのである。

 

すべてはクラウドへ

図1:震災時にダメージを受ける情報システムへのリスク対応

 

冒頭で述べたようなクライアントPCの現状は、「情報システム部門が管理・把握していないデスクトップ」という事態に値する。つまり、いざ震災が起き大規模な障害が発生すると、情報システム部門が管理・把握している部分から先に対策がとられることになり、「管理・把握されていないデスクトップ」は対策の優先度が低くなることが考えられる。いまやホワイトカラーの従業員すべてがデスクトップから情報システムにアクセスしているにもかかわらず・・・。

この震災対策を考えるときに、今一度、「情報システム部門が管理・把握しているデスクトップ」に位置付けてみる必要があるのではないだろうか。