XenDesktop/XenAppで始めるデスクトップ仮想化入門(最終回)

最終回 仮想デスクトップによる印刷の実行

仮想デスクトップによる印刷の実行

XenDesktopインストール後、デフォルトのまま設定を変更していなければ、クライアントが認識しているプリンタを使って印刷することができます。仮想デスクトップ環境であるからといって別途特別な設定を行う必要はありません。

ただし、現時点(2010年8月)のMac用Citrix Online Plug-inで仮想デスクトップに接続してコンテンツの印刷を実行した場合、Windows側で「印刷」を実行後、Mac側の印刷ダイアログが表示されるため、下記のようにダイアログで[Print]をさらに押す必要があります。

デスクトップ仮想化

Mac用Citrix Online Plug-in

XenDesktop環境のチューニング

XenDesktopとXenAppの環境の構築がすべて終わりました。
今回はXenDesktopとXenAppをさらに快適に利用できるように、様々な設定をチューニングするコツを解説します。

Windows パフォーマンスオプション

まず、Windowsのパフォーマンスを向上するには、Windowsの「パフォーマンスオプション」の設定変更が思い浮かぶと思います。
この設定変更は仮想デスクトップ環境でも有効であり、出来る限りここの設定をオフにすると体感速度を向上する事ができます。

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Windowsの「パフォーマンスオプション」の設定

Internet Explorer 詳細設定

Internet Explorerを使ってWebページを見る場合、「スムーズスクロールを使用する」をオフに設定すると、スクロール速度を向上する事ができます。

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Internet Explorer 詳細設定

具体的にこの設定がオンの場合、オフの場合どれだけ差が出るかは以下の通りです。

スムーズスクロールの設定別
HTML文章のスクロールによる比較
平均帯域使用量
(KB/sec)
所要時間(秒)
実機
SS-オン
90
SS-オフ
42
Citrix ICA
SS-オン
14.85
246.7
SS-オフ
8.2
44

夏目漱石著「わが輩は猫である」全文を入力したHTMLファイルを呼び込み、スクロールにかかった時間と平均帯域使用量を測定

上表を見ていただければわかるとおり、スムーズスクロール(以下SS)がデフォルト設定であるオンの状態の場合、
実機と比べてスクロールを自動実行させた場合の処理完了までの時間に大きな差が出ているのがわかるかと思います。

一方、SSをオフにした場合は実機とパフォーマンス的には変わらないことがわかるかと思います。
従って、VDI環境においてブラウザのパフォーマンスを上げるには「スムーズスクロールをオフにする」のも有効であると言えます。

デリバリーサービスコンソールで設定可能な設定

「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面を環境に合わせて設定変更するとウィンドウの描画スピードを向上できます。ただし、圧縮レベルを高く設定すればするほど画面画像の表示が荒くなってしまうため注意が必要です。

・XenDesktopの場合

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenDesktopの場合(1)

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenDesktopの場合(2)

・XenAppの場合

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenAppの場合(1)

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenAppの場合(2)

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenAppの場合(3)

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「サーバーファームプロパティ」のブラウザアクセラレーション設定画面 – XenAppの場合(4)

HDXの画質については後述の「拡張カラー圧縮機能」を使う方法も参照してください。

拡張カラー圧縮機能を使ってHDXの画質を設定する方法

シトリックスの公開文書「拡張カラー圧縮機能を使ってHDXの画質を設定する方法」に従い、拡張カラー圧縮機能を利用することでHDXの画質を設定でき、使用帯域幅を削減することができます。

動画の再生パフォーマンスを改善する方法

シトリックスの公開文書「MaxFramesPerSecondを設定してXenDesktopの動画再生パフォーマンスを改善する方法」に従い、仮想デスクトップ環境でレジストリを修正することで動画の再生パフォーマンスを改善できます。

WAN接続環境におけるXenDesktopの操作性パフォーマンスの最適化方法

シトリックスの公開文書「WAN接続環境におけるXenDesktopの操作性パフォーマンスの最適化方法」に従い、DDCのパラメータを追加することで、XenDesktopの操作性パフォーマンスを最適化できます。

仮想デスクトップ接続したときに「シャットダウン」、「再起動」などを非表示に制限

デフォルトの状態ではユーザーが容易に仮想マシンをシャットダウンしたり、再起動する事ができてしまいます。
これをWindows Serverの「グループポリシーの管理」を使って制限できます。

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Windows Serverの「グループポリシーの管理」

グループポリシーによる設定を行なった場合も、管理権限でそれぞれのサーバーにローカルログオンすれば、これらの仮想マシンをシャットダウンしたり再起動できます。
なお、この他にも仮想デスクトップ環境の制御をグループポリシーの管理で細かく制限することができます。

DDCサーバーを安全に運用(Windows ファイアウォール編)

DDCサーバーはWindows Server 2003 R2上で動作させています。
Windows Server 2003にはWindows XPと同様Windows ファイアウォールが利用できますが、Windows ファイアウォールはデフォルトではオフに設定されています。しかし、セキュリティの事を考えるとこのまま運用するのは少し心配です。
そこで、DDCサーバーのWindows ファイアウォールをオンにしてみます。
ただし、いくつかのポートを開放しないとWeb Interfaceからアクセスできなくなるため、以下の例外設定を追加してください。

[プログラムの追加]
・Presentation Server 管理コンソール
・デリバリーサービスコンソール

[ポートの追加]
・TCP/80(Web Interface)
・TCP/8080(ICA-XML)
・TCP/8082(ライセンス管理コンソール)
・TCP/1494(ICA-Default)
・TCP/2512(Citrix-IMA)
・TCP/2598(CGP-Server)
・TCP/7279(Citrixベンダデーモン)
・TCP/27000(Citrixライセンスサーバー)
・UDP/1604(TCPブラウズ用)
※ポート番号は管理コンソールなどで設定したポートを指定してください

※参考ドキュメント

セキュリティに関する推奨事項
ファイアウォールを手動で設定するには
ファイアウォールのためのポート番号の変更

公開されているパッチを適用

公開されているパッチを適用する事で、パフォーマンスの向上が期待できる事もあります。
シトリックスのサポートサイトを定期的にチェックして、新たなパッチが公開されていないか確認してみてください。

その他の設定変更

XenDesktopやXenAppは、今回ご紹介した方法以外にも様々なカスタマイズが可能です。
詳細はCitrix Product Documentation Libraryの「Desktop Delivery Controller環境のカスタマイズ」をご覧ください。

XenDesktop/XenApp環境の起動、停止手順

Windows Updateやメンテナンスのために環境を停止する必要がある場合は以下の手順に従い停止、
再起動を行ってください。

・起動手順
1. ADサーバー
2. PVSサーバー
3. DDCサーバー(起動するとPXEブートの仮想デスクトップが自動的に起動)

まず、ADサーバーを起動します。
ADサーバーの起動後、まずブートイメージが配備されているPVSサーバーを起動させてからDDCサーバーを起動します。
正常にDDCサーバーが起動しましたら、DDCサーバーが設定に従って仮想デスクトップを起動します(仮想デスクトップは自動的に立ち上がるため、手動で起動する必要は特にありません)。

・停止手順
1. DDCサーバー
2. PXEブートの仮想デスクトップ
3. PVSサーバー
4. ADサーバー

PXEブートの仮想デスクトップはDDCサーバーから起動する命令をもらい、PVSサーバー上のブートイメージを使って起動するため、システムを終了する場合はまずDDCサーバーを完全に終了する必要があります。
DDCサーバーが完全に終了したら仮想デスクトップをすべて終了し、すべての仮想デスクトップを終了した後にPVSサーバーを終了します。最後にADサーバーを終了します。

仮想デスクトップ導入におけるコスト

ここまでXenDesktopとXenAppについての説明と、環境の構築方法について説明しました。これらが便利なものか理解いただけたと思います。
次に、XenDesktopとXenAppを実際に運用するためのライセンスを説明します。

・XenDesktop ライセンス
※XenDesktop Enterprise EditionにはXenApp Enterprise Editionのライセンスも含まれています。
・Windows Server x4(AD,DDC,PVS,XenApp用/それぞれ冗長化しない場合の最低限)
・Windows Server Device CAL(接続クライアント分必要)
・Windows(クライアントOS)
・Windows Virtual Desktop Access(13000円/1クライアント)

まず、当然ながらXenDesktopのライセンスが必要で、それに加えてActive Directory、Desktop Delivery Controller、Provisioning Services、XenAppを動作させるためにWindows Serverが必要になります。
また、これらのサーバー上で動いているサービスにアクセスするためのライセンスであるWindows Server Device CALも必要になります。
そして、最後に仮想デスクトップの数分のWindows Virtual Desktop Access(Windows VDA)ライセンスが必要になります。Windows VDAについては、2010年4月26日の発表であったとおり、SA契約をしている場合は必要ありません。

ただし、この情報はこの記事を書いた時点での情報であり、今後ライセンスが変更になる可能性がありますので、導入の際は常に最新の情報をチェックするようにしてください。

Microsoft仮想化ライセンス情報
Microsoftの仮想デスクトップのライセンス(VDA)
Windows Server 2008 早わかりライセンスガイド
Citrixライセンスプログラム
マイクロソフトがVDI販売戦略を明らかに、シトリックスとも協業(IMPRESS BUSINESS MEDIA)
MS、企業向けのデスクトップ仮想化製品を強化(ITmedia)

いかがだったでしょうか。6回に渡る連載を通じて、XenDesktopやXenApp、そしてXenServerをより身近なものに感じ取っていただけたと思います。また、これらの仮想デスクトップ環境の構築も決して難しくないことがわかっていただけたと思います。

XenDesktopやXenAppは有償の製品ではありますが試用版もありますので、まずは試用してみてください。今回の連載がXenDesktopやXenApp導入のきっかけとなれば幸いです。