デスクトップ仮想化の価値を最大化する極意とは?

仮想デスクトップをサービスとして利用する

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多くの企業はさまざまな経営課題への対応に迫られている。国内外での激しい競争の下に、業務の効率化に向けた「生産性の向上」や、外部環境の変化に迅速に対応する「柔軟性」は、より一層、必至の対応が必要だ。また、東日本大震災を機に、「事業継続性の確保」の大切さもあらためて広く認識されるまでになった。

こうした経営課題に対するITソリューションとして、近年企業での採用が相次いでいるのが、仮想化技術を活用し、デスクトップ環境をサーバ側で一元管理する「デスクトップ仮想化(VDI)」である。

VDIではサーバ上で集約管理されたデスクトップ、アプリケーションへ、ネットワークを介して場所を問わずアクセスすることができる。つまり、社外でも社内にいるときと同様に情報へアクセスできるため、エンドユーザーの生産性向上を見込める他、大規模震災時などには在宅勤務などによって事業継続性も実現できる。また、物理PCよりもクライアント管理の手間を大幅に削減でき、IT部門はその余力を他のIT施策に振り分けることで生産性の向上につなげることも可能だ。

このVDIの導入効果を極大化するために、ここにきて少なからぬ企業が関心を寄せ始めたのが、仮想デスクトップ、アプリケーションをクラウドサービスとして利用する「DaaS(Desktop as a Service)」だ。では、DaaSは従来の自社でシステム環境を整備する、いわゆるオンプレミス型のVDIと比べどのような違いやメリットがあるのか。本稿ではその点について事例も交えつつ解説する。

VDIにおけるDaaSとオンプレミス型の違いとは

同じVDIを実現する仕組みだけに、DaaSとオンプレミス型で基本的な仕組みに違いはない。ネットワークを介して仮想デスクトップ環境にアクセスする利用形態も共通する。大きく異なる点はシステムの運用形態だ。オンプレミス型が自社のデータセンター(DC)に配置し独自に運用を行うのに対し、DaaSはプロバイダーのDCにホスティングする形をとる。そして、後者によってシステム運用をプロバイダーへアウトソースできるようになることがDaaSの最大の意義といえる。

既に述べた通り、VDIではクライアントやアプリケーションの配備/管理の手間が大幅に軽減されるものの、オンプレミス型ではシステムの自社保有の問題からは逃れられない。現に、環境構築に少なからぬコストと期間を要するとともに、リソースのプロビジョニング、ロードバランシング、ネットワークなどの状況に絶えず目を光らせておかねばならない。そのため、システムの運用管理やヘルプデスクなどの煩雑な作業にまつわる手間とコストの負担も求められる。

だが、デスクトップやアプリケーションをサービスとして利用可能なDaaSであれば、専門のサービスプロバイダーが、環境構築や可用性、パフォーマンスを常時監視してくれるため、上記の課題を抜本的に解決できる。さらに、災害時に従業員が出社できない場合でも自宅作業が可能になる他、既存のクライアント端末が使えなくなっても、代替機に仮想マシンイメージを配布すれば、すぐに既存のデスクトップ/アプリケーション環境を用意できるなど、事業継続計画(BCP)/災害対策(DR)としても有効である。知識やノウハウに乏しくとも利用料を負担するだけで迅速に利用に乗り出せ、システムの管理業務のみならず、煩雑なサポートなども一括してアウトソースできるわけだ。

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DaaSへの移行によりITコストの最適化が可能に

その結果、DaaS環境ではシステム整備や運用にまつわる業務が大幅に削減され、必然的に“ヒト”と“カネ”の両面で余裕が生まれることになる。それらを収益向上など、本業に寄与するIT施策に回すことで、IT投資の最適化、ひいてはITを武器とした“攻め”の経営にも携われる。シトリックス・システムズ・ジャパンのテクノロジー&ソリューションズでシニアマネジャーを務める竹内裕治氏は「DaaSによってVDIシステムの各種コストがオンプレミス型よりもさらに削減され、ITのコスト構造を抜本的に見直せるようになる。つまり、DaaSへの移行はより一層のIT武装のための有力な選択肢である」と解説する。

注意すべきは、DaaSにも向き不向きがあること。VDI環境ではクライアント環境の標準化が、管理業務の効率化とコスト削減に大きく貢献するため、個々のユーザーの利便性を優先するほど、仮想マシンを共通マスターイメージで管理するDaaSの利用はなじみにくい。つまり、現場の使い勝手を重視するのであれば細かなカスタマイズがしやすいオンプレミス型が向くと考えられる。導入に当たっては、ユーザーへのアセスメントを基にユーザーの業務要件に合致した形態の選択が肝要となる。

もっとも、市場ではDaaSへの期待が著しい。IDC Japanの調査によると、クライアント仮想化ソリューション市場における2013年から2017年のCAGR(compound average growth rate:年平均成長率)は、オンプレミス型の17.9%に対し、DaaSでは62.2%と極めて高い伸びが予測されている(IDC Japan 国内クライアント仮想化市場 2012年下半期の分析と2013年~2017年の予測:キャズム越えの衝撃 J13190102 2013年4月)。コストをはじめDaaSのさまざまなメリットが認知されつつあることがうかがえる。

着々と広がりを見せるDaaSの用途

既にDaaSを業務に取り入れている企業も決して少なくない。大手化粧品メーカーである資生堂もその1社である。

2000年代前半からオープンシステムの導入を加速してきた資生堂では、老朽化が進むフロント端末の見直しが業務高度化のために不可欠と判断。その実現に向け、2009年から最大子会社である資生堂販売の国内約70拠点のクライアント端末の全体最適化について検討を開始した。2012年1月には「Citrix XenDesktop」を利用した新日鉄住金ソリューションズの「M3DaaS(エムキューブダース)@absonne」による仮想デスクトップ環境を整備した。同社が整備してきた業務システムは、Webアプリケーションやクライアントアプリケーションなど多岐にわたるが、それらの全てに対応していたことがXenDesktopの採用理由である。

配信されるデスクトップイメージは、業務で一般的に利用されるシステムを登録した「標準タイプ」を基本に、パワーユーザー向けにOSレベルから設定変更が可能な「セルフタイプ」も用意。これらをプロビジョニングサービスにより一括管理し、端末に配信することで、ITスキルに乏しいスタッフでも安心して利用でき、かつ利便性の高いデスクトップ環境を実現。DaaSとXenDesktopの組み合わせによるフルアウトソーシングによって、コスト削減やセキュリティ強化、運用管理効率化も達成しているという。

一方で、ネットワークを介して、場所を問わずデスクトップが利用できるVDIの特性に着目し、DaaSをワークスタイル変革に活用する企業も相次いでいる。グループを含め国内で4万人の社員を擁するリコーグループでは、そのためにNTTコミュニケーションズのDaaSサービス「Bizデスクトップ Pro」を採用し、外回りが多い営業職が外出先からデスクトップにアクセスし作業が行える環境を整備。見積書の作成の短期化など、顧客対応の迅速化で確実な成果を上げているという。

また、VDIで不向きとされた大容量データを扱うアプリケーションのDaaSでの利用も広がり始めた。総合エンジニアリングメーカーのロザイ工業は、業務に不可欠なCADアプリケーションのAutoCADが「Citrix XenApp」に対応したのを機にDaaSへの移行を決断。プロバイダーであるパナソニックインフォメーションシステムズがCADベンダーから支援を受けつつシステム構築に取り組むことで、シンクライアント専用端末100台と既存PC12台においてAutoCADのDaaS環境を実現した。

これまで、仮想デスクトップ上での画面転送に膨大な容量を要するCADは安定稼働が難しいといわれていたが、仮想デスクトップのレスポンスでは従来と変わらぬ処理速度を確保。業務に支障を来たすことなく安定稼働を続けており、クライアントの管理負荷軽減にも確かな手応えを感じているという。

競争を勝ち抜くためにDaaS導入の検討を

DaaS利用の裾野が広がりを見せる中で、Citrix製品を利用したDaaSサービスも相次ぎ登場。プロバイダーの本業はキャリアやベンダー、SIなどさまざまであり、各社は業務要件を基にした仮想デスクトップのカスタマイズや、セキュリティ機能の提供、端末のレンタルなど、自身の強みを生かしたサービス提供に知恵を絞っている。

DaaSは初期コスト、運用コストを含めたTCO低減の有力な選択肢である。今後の高い成長が予測され、企業での導入が相次いでいるのも、これらDaaSのメリットが評価されているからこそである。

厳しい競争を生き残るためにも、シトリックスおよび各サービスプロバイダーの助言を受けながら、自社の業務要件を基にDaaSの比較検討に着手してみてはいかがだろうか。

本稿は、TechTargetジャパンに掲載された記事からの転載です。