仮想デスクトップ導入事例:慶應義塾大学病院

XenDesktopで電子カルテをタブレット端末に配信。患者へより丁寧な説明が可能になり、将来的な関連病院とのネットワーク化にも期待

1858年、福澤諭吉により開設された慶應義塾。医学部は1917年に北里柴三郎博士を初代医学部長に迎えてスタートしました。慶應義塾大学病院(以下、慶応病院)は1920年に開設。基礎と臨床の融合した医学を目指し、「独立自尊」「実学の精神」を基本理念に、「患者さんに優しく、病気に厳しい」患者中心の医療を展開しています。また先進的医療の開発により、質の高い安全な医療を提供するほか、豊かな人間性と深い知性を有する医療人の育成や、人権を尊重した医学と医療をとおして人類の福祉に貢献する取り組みを推進しています。こうした取り組みの一環として医療現場のIT化にも注力しており、電子カルテシステム構築基盤の一つとしてCitrix® XenDesktop® を採用しました。

 

デスクトップ仮想化 デスクトップ仮想化
慶應義塾大学病院
副病院長
病院情報システム部長
天谷 雅行 氏
慶應義塾大学病院
大学病院事務局次長(情報システム担当)
兼信濃町キャンパス事務次長(情報システム担当)
武内 孝治 氏

 


課題:より効率的な診察のためにカルテの仕組みを検討

インタビューア:XenDesktop導入前の背景に関してお聞かせください。

天谷氏:
慶応病院は、29の診療科と12の中央診療部門に、研修医を含め800名以上の臨床系医師が配属され、1日平均の外来患者数は約3,000人、1日平均の在院患者数は約900人、年間2万人以上の救急患者を受け入れるほか、手術件数も1万3千件に及びます。また日本全国の関連病院との人事交流や医療連携による地域医療にも取り組んでいます。さらに外来患者の約6割が全国各地の病院から紹介された患者であることも特長のひとつです。まず患者さんの背景、紹介内容、問診内容を見て診察を開始します。患者さんの症状をいかに短時間で効率的に把握するかは、患者さんの負担を軽減するためにも、診察において非常に重要なのです。

インタビューア:どうのような課題があったのでしょうか?

天谷氏:
慶応病院では、診察時に紙のカルテを使用していたために、カルテの作成から保管までの作業が非常に煩雑であるという課題を抱えていました。また回診時に1冊のカルテやレントゲン写真を医師や看護師が複数でのぞき込まなければならなかったりすることも課題でした。

インタビューア:これらの課題解決にXenDesktopが有効であったのですね?

天谷氏:はい。こうした課題を解決するために慶応病院では、電子カルテシステムを導入することを決定しました。XenDesktopを導入し、仮想デスクトップ上での電子カルテ利用も段階的に進めています。


ソリューション:仮想デスクトップによる電子カルテの利用により診察を効率化

インタビューア:導入はどのように行ないましたか?

武内氏:2011年1月より電子カルテシステムの構築を開始しました。2012年1月に電子カルテシステムを本番稼働し、続いて6月にXenDesktopを本番稼働して、仮想デスクトップ上でも電子カルテを利用し始めています。震災の影響で開発がストップした期間もありますが、約10カ月で電子カルテシステムを導入しています。その後、6ヶ月で仮想デスクトップシステムを構築しました。今回、構築された電子カルテシステムは、約2,500台のPC端末に加え、XenDesktopによりタブレット端末等へも配信され、将来、飛躍的な利用増が見込まれています。また一方、ホームページ閲覧のためにCitrix XenApp®を導入、利用することで、一層セキュリティを強化しています。

 

インタビューア:XenDesktopにより利便性は高まりましたか?

天谷氏:仮想デスクトップにより電子カルテをタブレット端末で利用できるようになり、劇的に使いやすくなりました。たとえばカルテの入力や紹介状の作成、各種データ入力などはPC端末で行い、回診時などはタブレット端末で電子カルテを参照することで、非常に効率的な診察が可能になります。

 

インタビューア:XenAppは、どのように利用されているのですか?

天谷氏:XenAppは、PC端末からホームページを閲覧するために利用しています。たとえば医師が患者さんに紹介する病院のホームページを見るためなどに使用しています。また、最近、ジェネリック医薬品が多く利用されるようになったので、名前と効能を調べたり、アレルギーの情報や学会の情報などを検索しています。

デスクトップ仮想化


導入効果:タブレット端末により電子カルテを手元で活用。患者へもより丁寧な説明が可能に

インタビューア:実際の医療現場でXenDesktopを利用した導入効果に関して教えてください。

天谷氏:
現在はまだテストの段階ですが、この仕組みは本当に便利です。
診察室にはデスクトップPC がありますが、ディスプレイが固定されているので、患者さんへの説明時に画面を見てもらいたい時など、不便な場合があります。タブレット端末を使えば、必要な情報を手元で素早く見つけ、患者さんと話をしたり、結果を患者さんに見せたりすることもできます。情報が手元に来ただけで、これほど便利になるのかということを強く感じました。

インタビューア:XenDesktopによるパフォーマンスなどの操作性はいかがですか?

天谷氏:
アプリケーションの起動が速いことも今回導入した仕組みのメリットです。ログインしてから目的のアプリケーションまで、スムーズにたどり着け、外来の診察が本当に効率的になりました。また回診においても、カルテの情報やレントゲン写真などをタブレット端末で確認できるのはもちろん、患者さんに見せて説明ができるので、非常に便利です。いかに短時間で目的の情報にたどり着き、治療方法を判断するか、それを可能にしたシステムだと高く評価しています。

インタビューア:診察が効率的になり患者の満足度も向上したのですね。

天谷氏:
はい。最近の病院では、ベッドと診察台を1 ユニットにしたデザインが多いのですが、慶応病院では患者さんが多いため、診察準備に時間がかかると結果的に患者さんの診察までの待ち時間が長くなってしまいます。そのため診察室にベッドを3 台並べ、3 人の患者さんに各ベッドでそれぞれ診察準備をしてもらい、医者が各ベッドを回って診察するシステムになっています。このとき3 台のベッドにはPC 端末は設置されていないので、タブレット端末が非常に有効です。患者さんにもタブレットで説明ができ、大変好評です。


今後のプラン:1 人1 台のタブレット端末を業務で活用。病院外からの電子カルテ利用にも期待

インタビューア:今後の予定に関してお聞かせください。

天谷氏:今後、慶応病院では、XenDesktop により約250 台のPC 端末やタブレット端末にも電子カルテシステムを配信、利用する計画です。将来的には全職員がこれらを利用することで、新しい業務スタイルを確立したいと思っています。これにより、医療現場は大きく変わります。電子カルテがいつでも手元で利用できることで、医療の価値が大きく高まります。

 

インタビューア:電子カルテ以外でのXenDesktop利用の計画はありますか?

武内氏:
今後、セキュリティ等についての検討を重ね、段階的に研究室など外部からの利用を開始していきます。さらに大学の医学部で、教材を電子化してタブレット端末で利用できるようにしてほしいという要望もあり、検討しています。タブレット端末を利用した授業や情報活用は、今後の医学部における情報化のひとつの流れになる可能性を感じています。

 

インタビューア:ますます質および利便性の高い医療を患者さんに提供できそうですね。

天谷氏:
今回構築した電子カルテシステムを関連病院へ展開していくことも期待しています。現在は慶応病院のシステムに過ぎませんが、今後は今回の電子カルテシステムをベースに、関連病院との情報共有のためのネットワークを構築していきたいと思っています。これにより、患者さんが必要なときに、希望する場所で、必要な治療を受けることができます。たとえば本当に難しい治療は慶応病院で行い、回復したら地域の関連病院でリハビリを行うという体制を確立できます。これにより地域の活性化にもつながります。その後は、国内で構築した医療ネットワークを、アジア地域へと広げていきたいと思っています。そのためには情報をいかに共有できるかがポイントであり、今後の電子カルテやデスクトップ仮想化の仕組みに期待しています。

インタビューア:ありがとうございました。

この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます