人事担当者から見たデスクトップ仮想化の導入メリット

AIU損害保険株式会社の在宅勤務活用によるワークライフバランスの実現

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AIU損害保険 人事担当執行役員 兼 人事部長
益子憲明氏
人事部 マネージャー
栄次勇輝氏

日経BP(日経情報ストラテジー)主催「ワークスタイル変革シンポジウム」講演レポート

1946年に日本で営業を開始したAIU損害保険株式会社は、損害保険業界の世界的なリーダー企業です。世界130以上の国や地域でサービスを提供し、日本での元受正味保険料が2427億円(2012年)、総資産が1709億円(2012年)に及び、従業員数は2150名(内勤社員のみ)となっています。同社では、フォーチュンの調査でも、5年連続で顧客満足度の一位を獲得するなど、サービスの品質にも優れています。そのサービスをさらに高めていくために、本社業務のBCP対策に取り組むと同時にワークライフバランスを実現しました。

本社BCP対策としての在宅勤務の検討

「当社がBCP対策に取り組むきっかけとなったのは、東日本大震災にありました」とAIU損害保険 人事担当執行役員 兼 人事部長 益子憲明氏は切り出します。
「当時は、本社機能を富山に移して、昼夜を問わずに対応し、事業を継続的に遂行できましたが、それ以降も、広い範囲に大規模な損害が発生したときの対応として、BCP対策が必要と考えて、準備と検討に入ったのです」

AIU損害保険株式会社では、在宅勤務の検討を開始した当初は、ワークライフバランスよりも本社のBCP対策として、その可能性や方法を調査しました。そして、本社業務の内、優先順位が高い業務を在宅で対応できるシステムの構築に取り組んできました。具体的には、保険の引き受け業務や保険金の支払い業務といった、業務の内容に合わせた優先度を決めて、事業継続の能力を改善してきました。その取り組みについて、人事部 マネージャー 栄次勇輝氏は、次のように説明します。

「在宅勤務を導入するにあたっては、社内で理解を得ることが重要でした。在宅勤務には、BCP対策として事業の継続性を確保する、というメリットだけではなく、生産性の向上や社員の意識改革に、優秀な人材の確保といった4つのメリットがあります。その反面で、労働時間の管理が難しく、在宅で延々と仕事をしてしまったり、反対にさぼったりしていないか、といった心配もあるので、適切な評価基準が求められました」

こうした問題を解決するために、同社では2011年4月からシステムの構築と平行して、在宅勤務を導入するための社内ルール作りにも取り組んできました。

在宅勤務の導入運営のポイント

2011年の4月下旬から在宅勤務を検討するチームを設立した同社では、パイロットテストなどを実施して、同年12月から在宅勤務制度の正式な導入を開始し、その運営を人事部に移管しました。
「在宅勤務を運営する上では、目的の明確化や部門長の理解、社内への情宣にモチベーションの維持、また健康管理やITによるサポート、さらにペーパーレス化の促進が、重要なポイントでした。業務規程や運営ルールの制度は整えても、テレワークを推進するためには、会社の風土を変えていくことが求められます。それは、一朝一夕には難しく、実施者と部門長と同僚の全員が納得できる利用環境を目指さなければなりません」と栄次氏は説明します。

同社の在宅勤務では、部門長と人事部長が電子メールで申請書と指示書をやり取りして、事前に社員が在宅でどのような業務を行うかを申告する制度となっています。在宅勤務を実施する社員は、在宅勤務実施計画を作成して、本人の意向に加えて上席者と人事部長の承認を得て実施できる体制を整えています。

「在宅勤務の正式な導入においては、在宅勤務管理体制の明確化だけではなく、端末のシンクライアント化によるセキュアで安定したIT環境の整備がポイントでした。また、社内のプリンターも複合機に切り替えて、オフィスワークのペーパーレス化も促進しました」と栄次氏は補足します。

在宅勤務のシンクライアント化に貢献したXenDesktopとNetScaler

AIU損害保険株式会社の在宅勤務では、XenDesktopを採用して、シンクライアント端末を利用した仮想デスクトップを構築しています。在宅勤務を承認された社員には、在宅専用のノート型端末とトークンが配布され、標準装備されたWeb会議ソフトによって、リモートで会議にも参加できるようになっています。また、サーバー側にはNetScalerを採用し、負荷分散によるレスポンスの良い仮想デスクトップを実現しています。

「社内で在宅勤務を実施した社員にアンケートをとったところ、90%以上の実施者が、ワークライフバランスの向上を実感し、80%以上の者が業務の生産性が向上したと回答しました。そのコメントの中には、通勤時間を子供の育児サポートに利用できた、周囲の雑音や電話などに中断されないので集中して仕事ができる、気持ちの余裕が持てる、などの感想がありました」と栄次氏は、シンクライアントによる在宅勤務の成果を話します。

その一方で、上席者へのアンケートでは、実施者のワークライフバランスが改善されただけではなく、部門全体の業務の生産性が、通常の業務と同様以上、という回答も得られています。そのコメントの中には、家族とのコミュニケーションが良くなり、仕事と生活が活性化したようだ、といった評価や、仕事が計画的になり作成した資料の質も向上した、という成果、さらに会議や資料の作成から出張のスケジュールまで計画的かつ効果的に組み立てるようになり生産性が向上した、などの高い効果も得られています。

「本社では、BCP対策を確実なものとしていくために、オフィスの閉鎖訓練を実施しています。社員に事前に通知しないで、朝一斉に在宅での業務を指示します。過去に実施した訓練では、お客様にご迷惑をおかけすることなく、テレワークで業務を遂行できました。今後は、在宅勤務が難しい業務への対応や本社以外の拠点およびグループ会社への展開も計画しています。テレワークの拡大と深耕を図ることで、事業の継続性を通して社会的な責任を実現していきます」と益子氏は締めくくりました。